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2022.09.05 文化人類学の観点から酒蔵を観察する


文化人類学の観点から酒蔵を観察する

参与観察を土台としたエスノグラフィーという手法を用いて記録する

文化人類学とは、各地域の人びとが営む文化や生活様式を調査するため、調査者は「参与観察」を土台としたエスノグラフィーという手法をとって、実際に対象となる人びとと生活を共にし、五感を通じて研究を行う学問です。酒造りの現場で蔵人として住み込みで働き、日々の作業の手順や現場での言葉のやり取りを把握し、酒蔵での技能の継承の方法をはじめ、実際に造り手たちがどのような作業をおこなって酒造りを実現させているのかなどを記録していきます。

科学的な用語はミスマッチ

人類学的な視点でものごとを記録するには、現場の人びとと同じ目線で酒造りを把握することが重要なため、現場で使用されていない言葉を使って表現することはできれば避けたいものです。例えば、教科書では「もろみを管理する」「温度管理をする」という言葉が使われていますが、現場では「管理」という言葉はあまり使われていないようです。適切な表現を探すことも、研究において非常に大切です。

蔵人に求められること

「勘」と一括りに言われることもありますが、実際は温度の調整など、とにかく数値を測って記録するため、蔵人には数的に処理する能力が求められます。杜氏が一日で働く時間において、測ったり、帳簿をつけたりする時間は大きな割合を占め、分析にも時間がかかります。特に若手の蔵人の方が、酒造りを科学的に扱おうとする傾向もあるようです。熟練した杜氏でも、蔵や場所が変わると、やり方がまったく異なるため、試行錯誤しながら、酒造りを行います。

発酵のプロセスを極める杜氏たち

良い素材を使用するのはもちろんのことですが、杜氏たちに「どんな米であろうが自分たちの蔵の味の酒を造る」という強い意気込みが感じられると岩谷先生は話します。素材の状態によって造り方を丁寧に変えながら、古くから造り続けてきた美味しい日本酒を守り続けています。

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