「シャンパーニュ」など特定の地域を名指したブランド産品をつくる場合、その地域内で生産され、一定の基準や品質を満たしていることが必要です。これらの条件をクリアしていることを示すのが「GI (Geographical Indication=地理的表示)」です。国税庁長官の指定を受けることで、地域の共有財産である「産地名」を独占的に名乗ることができます。つまり「国のお墨付き」であるGIがついていることで、地域ブランドの価値を守り、お酒の特性をわたしたちに伝えやすくしているのです。
2020年3月、兵庫県の播磨地域22市町を産地とした日本酒が、「はりま」としてGI認証を受けました。特徴は、口当たりが柔らかく優しい丸みがあり、苦味渋みが少ない繊細なコク、豊かな香味があること。これは兵庫県産の山田錦を麹に用いることによって生まれるもの。播磨の大地が育んだ水稲が、お酒に心地よい酸味と、軽快な後味をつくりあげます。
「はりま」と表示できるお酒には、どのような条件があるのでしょう。まず米および米麹は、兵庫県産の山田錦であること。さらにはりま内で採水した水のみを使用していること。そして、原料に糖類等を使用していないこととされています。醸造、貯蔵および容器詰めもまたはりま内で行うことが決まり。つまり地域内ですべてが完結している必要があるのです。さらに「はりま酒研究会」が定期的に審査を行い、「はりま」の品質維持に努めます。
もともとは、はりま内の4つの酒造組合が一体化し「はりま酒文化ツーリズム」の活動を始めたことで至った、GIの取得。「はりま」のロゴマークは、稲穂と城を組み合わせ、山田錦と、かつて約270もの出城があった播磨を象徴的に見せています。「はりま」とひらがなで表記したのは、海外のマーケットを意識しているから。これをきっかけに、播磨には小さな造り酒造があることを、国内外に知らせたいという、強い願いが込められています。GIは、その地域の文化や歴史を世界中に伝える物語なのです。