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2020.01.21 山田錦のなりたち


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酒米といえば「山田錦」

日本酒の原料となる酒造好適米(酒米)のなかで、最もよく知られているのが「山田錦」でしょう。最大級の日本酒のコンクール「全国新酒鑑評会」で金賞を獲るためには「山田錦」を使うことが必須だといわれていた時代もありました。「山田錦」を使った日本酒が美味しいということは、一般の人々にも広く知られており、ブランドとなっています。

酒米と食用米の違い

「山田錦」のどこが他のお米(食用米)と異なるのでしょうか。まず、大粒であること。酒造りの過程において「高度精白」と呼ばれる、エグみとなるミネラル分やタンパク質を削る作業の際、お米が大粒である方が、割れにくく削りやすいと言います。また、「心白」と呼ばれる、お米の中心にある白く濁った部分が、大きく線状型であることもしかり。ここに麹(こうじ)菌が入り込み繁殖することで発酵がスムーズに進み、麹の溶けがよくなります。このような条件が揃っているために、非常に安定した状態で酒造りができるのです。

初の交配によって

品種改良の歴史からすると、「山田錦」が生まれるまでは、在来品種から良いものを選んでくる「純系淘汰」という選抜方法で品種がつくられていました。例えば、「山田錦」の母系にあたる「山田穂」は、地元の田んぼの中から、優良な性質を持った個体を選んで育成するという方法でつくられた品種です。しかし「山田錦」は、兵庫県の酒米では初めて交配によってつくられたという点で、画期的でした。

開発にたずさわった人

「山田錦」は1936(昭和11)年に兵庫県で生まれました。1923(大正12)年に、兵庫県立農事試験場(現在の県立農林水産技術総合センター)で、母系「山田穂」と父系「短棹渡船(現・渡船2号)」が交配され、その後いくつかの変遷を経て、現在の形となりました。その間、29名もの人々が山田錦の誕生に関わり、特に最終育成者で、酒米試験地の初代主任である藤川禎次氏が大きく貢献したと言われています。

兵庫県産がいい理由

「山田錦」を作る環境としても、兵庫県は最高のテロワールです。2019年現在40の都道府県で「山田錦」がつくられていますが、兵庫県産の山田錦は粒が大きく、形が整っているというデータがあります。兵庫県で獲れた山田錦の約8割が米穀の農産物検査で特上、特等と呼ばれる「上位等級」に該当し、通常よりも高値で取引されています。兵庫県の土地の特徴である、石灰(カルシウム)や苦土(マグネシウム)、カリウム、ケイ酸などミネラルを多く蓄えることができる、モンモリロナイトという粘土質の土壌、豊富な水源などが「山田錦」の生育に適しているのです。また、酒米試験地の設置など、兵庫県で行われている様々な「山田錦」の種子生産体制や栽培技術の確立に向けた取り組みが、そのクオリティの高さを支えています。

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