日本酒の主原料は、私たち日本人の主食でもある「お米」です。お酒を造るためのお米は、炊いて食べるためのお米(食用米)と区別して「酒造好適米(酒米)」と言います。酒米は、その他のお米と同じように、炊いて食べられない、というわけではありません。農家さんのなかには、良質な酒米だけ出荷して、その他のものは、お寿司やおにぎりにして食べるという方もいます。では、酒米と、食用米の間には、どのような違いや特徴があるのでしょうか。
まず、酒米が、食用米と大きく異なる点は「醸造」するということです。お酒を造るときは、酒米を麹(こうじ)菌でブドウ糖に分解し、その糖を酵母が発酵させて、アルコールをつくり出します。この醸造がしやすいお米のことを、「醸造適性がある」といいます。
どんなお米が醸造に適しているのかというと、一つは「心白(しんぱく)」の発現率が高いことが挙げられます。心白とは、お米の中心にある核のような部分のことを指し、主にデンプンでできています。程よく大きく、線状形であるものが高精白できるいとされています。白く濁って見えるのは、デンプン組織が荒く、隙間があるため、光が乱反射しているから。ここに麹菌が入り込み、根を張り、繁殖する(破精込む)ことで糖に分解されやすく、その後の発酵がスムーズに進みます。一方で、心白が大きすぎると割れやすいため、精米しづらくなることも分かっています。
もう一つ重要なのが、お米の粒の大きさです。お米の表面に含まれているタンパク質やミネラルといった成分は、食用の場合はある程度のうまみとなる場合があるのですが、酒造りの場合はエグみ、雑味となってしまいます。そういった余分な要素を取り除くため、酒造りの過程では「精米」という作業を行います。特に酒米では食用米に比べて、多くの部分を削る「高度精米」を行います。「高度精米」では、干して乾燥したお米をさらに削るため、あまりにもお米の粒が小さいと割れてしまい、収量が下がってしまいます。そのため、米粒が大きい方が良いとされています。
また、「山田錦」の稲は背が高いという特徴があります。本来ならば背が低い方が、強い風が吹いても倒れにくく、育てやすいのですが、酒米の場合は、ある程度まで稲を伸ばしてやらなければならないのです。伸びるほど、葉が蓄えている養分を、お米の粒に持っていくことになり、大粒になるためです。背の高い稲が倒れるのを防ぐためには、ケイ酸を多く含む土づくりを行います。そうすることで硬くコシのある稲になるといいます。また粘土成分のある土は、ミネラルなどの養分を蓄える性質があるので、稲がよく育ちます。