兵庫県には「山田錦」の他にも、ユニークな酒米がたくさん栽培されています。栽培されている酒米の品種数は、全国ナンバーワンの22種類。これからの期待が持てる、個性ある兵庫県の酒米を紹介します。
兵庫県で特定奨励品種に指定されている酒米は「山田錦」「五百万石」「兵庫北錦」「兵庫夢錦」の4種類です。それぞれに栽培適地があり、「山田錦」は北播磨地域と阪神地域の一部、「兵庫夢錦」は西播磨地域、「五百万石」と「兵庫北錦」は但馬、丹波地域が適地とされています。「兵庫北錦」は、全国で栽培されている有名品種「五百万石」と「なだひかり」を交配してできた品種です。大粒で心白の発生が良く、通常よりも早い時期に収穫できる早生(わせ)品種です。また、「兵庫夢錦」は、山田錦よりも倒れにくく病気に強い酒米として平成5(1993)年に誕生。大粒で、溶けがよく、醸造適性があります。「山田錦」の丸い甘みがある酒とはまた別の魅力を持った、しっかりとしたキレのある酒もつくれると、酒蔵からも好評です。
「兵庫錦」と「Hyogo Sake 85」は、海外需要に応える酒米・日本酒を開発する事業「次世代酒米コンソーシアム」から生まれた酒米です。どちらも倒伏(酒米の稲の背が高いために倒れやすいという性質)や、カビが原因で発生するいもち病、地球温暖化の影響など、現状の課題を克服する性質と高い収量を備えています。「兵庫錦」は兵庫県南部向けの晩生種で、高度精白できるため、大吟醸・吟醸に。また「Hyogo Sake 85」は県北部向けの早生種で、高度精白しなくても良質なお酒ができ、純米酒に向いているとされています。また海外に向けて酒どころ兵庫をアピールするために、全国で初めて品種名がローマ字で名付けられました。
ワインの世界でよく使われる「テロワール」という言葉を聞いたことはありますか?「テロワール」とは、「土地」を意味するフランス語terreから派生した言葉で、ワインの原料であるブドウの生育地の地理、地勢、気候による特徴を表します。ブドウは同じ品種でも、育った土地によって違った個性を発揮するため、「テロワール」が重要となるわけです。それと同じことが、酒米にも言えます。兵庫県ではミネラル分に富んだ土壌や、昼夜の寒暖差など、酒米が育つ環境を生かしながら、県内でも地域による環境の違いを細分化し、土地に根ざした酒米づくりを行なっています。