「疫(えき)から免れる(まぬがれる)」と書く文字通り、免疫とは、人間に自然と備わった防御システムのこと。体内に入り込んだ細菌やウイルスなどの病原体を異物として攻撃し、あるいは傷ついた組織があればそれを修復することで、自分の身体を正常に保つという働きをします。「自然免疫」と「獲得免疫」という2段構えになっており、さらに獲得免疫には、抗体が主役になる「液性免疫」と、免疫を担う細胞や物質が中心になる「細胞性免疫」のふたつに分かれています。
では発酵食品は、どのような免疫効果をもたらしてくれるのでしょう。大前提として、発酵食品には無数の菌がいます。中でも死んでいる菌は腸の中にいる細菌の餌となって腸内環境を整え、免疫細胞を刺激します。一方、生きたままの菌はそのまま腸の中を移動し、その代謝産物の力で腸を酸性環境にしてくれます。他にも発酵食品には、ビタミン・タンパク質・糖分などの栄養が豊富で、抗酸化力もあります。発酵食品の魅力は、そのバランスの良さ。体内に入ったさまざまな菌がそれぞれの作用を及ぼすことで免疫力を整え、総合的に体を元気にしてくれるのです。
昔から「味噌の医者いらず」と言われるように、全方位的に体を元気にしてくれるのが味噌です。醤油や日本酒など液体の醸造品は、製造の工程で汁だけを取り出し加熱殺菌しているので、菌は多くが死滅しています。一方、味噌はそのままなので、よりさまざまな効果が見込めます。また唯一食塩濃度が高いことで血圧を上げるという問題も、実は味噌の成分には血圧の上昇を妨げるペプチドという物質が備わっており、塩分で上がった分を相対的に整える効果があるのです。
免疫力とは「免疫反応」のことですが、これが過剰になると「アレルギー反応」となり、決して良いことではなくなります。ゆえに「免疫を上げる」はアレルギー的暴走としても捉えられるので、「免疫を整える」という表現がより適していると言えるでしょう。ちなみに醸造品には、脱顆粒抑制作用(アレルギーを止める作用)があると言われており、それを担うのが、麹の分解した成分「米ペプチド」や「大豆ペプチド」など。このように発酵食品はいろんな役割を働かせ、全体的に機能を整える、安全で健康的なもの。長い歴史を通じて今なお残り続けているのも、さもありなんでしょう。