人は呼吸によって酸素を体内に取り入れることで、その一部は必ず活性酸素に変化します。活性酸素は、細胞伝達や免疫機能へのよい働きを持つ一方、実は体にダメージを与え続けており、老化やがん、その他さまざまな病気につながる原因にもなっています。生きているかぎり、私たちは活性酸素から逃れることはできません。そこで活性酸素を取り除き、体内のバランスを保つために、抗酸化物質を摂取し続ける必要があります。年齢問わず、10代でも70代でも等しく必要です。
抗酸化物質は、日々の食事で摂取できます。特によいのが植物性の食べ物。野菜であれば色鮮やかな方が抗酸化作用が強い傾向にあり、にんじんやトマトなど緑黄色野菜に多く含まれる「カロテノイド」、野菜の外皮に多い「ポリフェノール」や、お茶に含まれている「カテキン」も同じです。また日本の発酵食品は、原料が米や大豆など植物性ですから、原料の時点で抗酸化成分をとても多く含み、発酵の過程でさらに強力になります。
そんな発酵食品の中でも、抗酸化成分を抜群に多く持つのが味噌です。大豆に含まれるタンパク質が分解すると「抗酸化ペプチド」になり、熟成して色味が濃くなると「メラノイジン」が生まれ、醤油も同じく強力な抗酸化力がありますが、食塩濃度を考慮すると使う量が限られています。なので味噌汁を飲んで、お魚に醤油をたらして、野菜を食べる、というような和食ならではの合わせ技により、より効果的な摂取ができます。発酵食品に含まれる菌は、栄養価を引き出す作用を与えるため、料理に少し加えるだけでも効果が高いのです。
また抗酸化物質は体内に蓄積しないため、毎日食べることが必要。そのためには「おいしく味わうこと」が、大切な要素となります。人はおいしいと感じると、快楽的な脳内物質を分泌し、気持ちがよくなる。明日も明後日も食べたくなることで、自然と体も良くなるのです。そういう意味で、味噌や醤油といった日本の発酵食品の匂いが好きな日本人の嗜好性は、とても有利に働きます。長きにわたり受け継がれる文化として醸成した発酵食品は、私たちをおいしくたのしく、健康に導いてくれるのです。